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産婦人科の進歩
次号掲載予定の最新論文


 症例報告  <78巻1号 掲載予定>

受診時に子宮内胎児死亡と診断された劇症型A群溶連菌感染症「分娩型」で母体を救命し得た1例

著者・共著者:

山内 彩子,北岡 由衣,徳山 晴菜,貴志 洋平

所    属:

京都山城総合医療センター 産婦人科

受付日 2025/4/21

劇症型A群溶連菌感染症はStreptococcus pyogenesによって発症し,streptococcal toxic shock syndrome(STSS)などの重症の敗血症を引き起こす.なかでも「分娩型」は急激に敗血症性ショックが進行して高率に胎児,母体の死亡をもたらす.今回われわれは受診時に子宮内胎児死亡と診断された劇症型A群溶連菌感染症「分娩型」で母体を救命し得た1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は41歳,3妊1産.妊娠37週1日に発熱,腹痛,下痢,胎動減少のため受診.子宮内胎児死亡を確認し来院2時間半後に児娩出となった.臨床経過から劇症型A群溶連菌感染症を疑い来院2時間後より抗菌薬の大量投与を開始し,内科と連携しエンドトキシン吸着療法や持続血液濾過透析,血漿交換などの治療を行った.第40病日に合併症なく退院となった.妊産婦の発熱,陣痛様の腹痛,胎児心拍数異常があった場合,劇症型A群溶連菌感染症の可能性を常に意識し,qSOFAスコアを考慮しつつ当該他科と連携し早急な治療介入を行うことが重要である.〔産婦の進歩78(1),2026年(令和8年2月)〕
 
キーワード:劇症型A群レンサ球菌感染症,妊婦,敗血症性ショック


 症例報告  <78巻1号 掲載予定>

Lenvatinib/Pembrolizumab併用療法中にirAE肺臓炎との鑑別を要したニューモシスチス肺炎の1例

著者・共著者:

多田 真恵,鵜飼 真由,山本 香澄,森田 康之,光岡 真優香,松井 克憲,市田 啓佑,山口 聡

所    属:

兵庫県立がんセンター 婦人科

受付日 2025/2/21

免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor;ICI)による免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events;irAE)は多彩な臨床症状を呈する.ICI投与下に間質性肺炎像を認めればirAE肺臓炎の除外を要するが,Lenvatinib/Pembrolizumab(LP)療法中にニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia;PCP)と診断した症例を報告する.症例は57歳で,子宮体癌の術後化学療法として6サイクルのPaclitaxel/Carboplatin(TC)療法後に1年6カ月で多発肺転移を認めた.6サイクルのTC療法後も病勢進行し,LP療法を開始した.5サイクル後に発熱し,経皮的酸素飽和度低下とCT画像で両側肺野にすりガラス影を認め,irAE肺臓炎としてステロイドパルス療法を開始した.血清β-D-グルカン高値を認めたため,気管支肺胞洗浄を実施しPneumocystis jirovecii PCR検査陽性となり,PCPの診断に至った.抗真菌薬とステロイドで加療しステロイド漸減後も症状と画像の改善を認めたためLP療法を再開し,1年が経過した現在もPCPの再燃なくLP療法を継続中である.ICI治療中の肺臓炎は,薬剤性だけでなく感染症やその他疾患の鑑別が重要である.〔産婦の進歩78(1),2026(令和8年2月)〕
 
キーワード:ニューモシスチス肺炎,免疫関連有害事象,irAE肺臓炎,免疫チェックポイント阻害薬,Lenvatinib/Pembrolizumab療法


 症例報告  <78巻1号 掲載予定>

閉経後の陰唇癒着症の再癒着防止目的にZ形成術および5‒flap形成術を行った1例

著者・共著者:

綾野 沙羅1),辻 あゆみ1),西川 実沙1),野口 武俊1),堀江 清繁1),桑原 理充1,2)

所    属:

1)大和高田市立病院 産婦人科

2)奈良県立医科大学附属病院 形成外科

受付日 2024/11/1

閉経後の陰唇癒着症は低エストロゲン状態を背景にして,感染・炎症・外傷などが加わり発症するとされている.以前より,エストロゲン製剤の使用や癒着部位の剥離・切除などの外科的手術により治療が行われているが,再癒着することも多い.そのため,最近では形成外科で瘢痕拘縮の治療・予防目的に使用するZ形成術による治療も行われている.今回われわれは,尿線の乱れから陰唇癒着症の診断に至り,Z形成術および既報では陰唇癒着症に対して行われたことのない5―flap形成術を併用することにより再癒着防止を行った症例を経験したので報告する.症例は66歳.6カ月前からの尿線の乱れを主訴に近医泌尿器科を受診し,小陰唇の癒合を認めるため紹介となった.両側の小陰唇は癒合し中央やや肛門側が5 mmほど開口していた.癒着は強固であり,全身麻酔下に癒着剥離を実施し,両側小陰唇の接着防止にZ形成術,創部の拘縮瘢痕による再癒着防止目的に5―flap形成術を行い,術後はメチルイソプロピルアズレン軟膏塗布とエストロゲン腟錠を使用した.術後1年1カ月の経過で形成術を実施した部分には再癒着は認めず,本法は癒着防止のため有用な術式と考える.〔産婦の進歩78(1),2026(令和8年2月)〕
 
キーワード:陰唇癒着症,排尿障害,Z形成術,5―flap形成術


 症例報告  <78巻1号 掲載予定>

腹腔鏡手術を機に認めたautoamputationした卵巣腫瘍の2症例

著者・共著者:

大谷 梓沙,沈 嬌※,水田 知紘,西沢 美奈子,梅田 杏奈,安井 悠里,西﨑 孝道,大西 洋子

所    属:

市立吹田市民病院 産婦人科

※責任著者

受付日 2025/1/31

卵巣腫瘍のautoamputationはまれな病態である.腹腔鏡手術を契機に確認されたautoamputationした卵巣成熟囊胞性奇形腫(mature cystic teratoma;MCT)の2症例を経験したので報告する.症例1は73歳,6妊2産.5cm大の右卵巣MCTの疑いにて腹腔鏡手術を実施した.術中には膀胱子宮窩右側に5 cm大の腫瘍を認め,周囲組織と広範な癒着が存在していた.腫瘍は左卵管采と連続していたが卵巣固有靭帯および骨盤漏斗靭帯との解剖学的連続性は認められなかった.症例2は57歳,3妊2産.術前に6cm大の右卵巣多房性MCTが疑われ,手術を実施した.術中にはダグラス窩に5cm大の腫瘍を認め,左右いずれの卵巣固有靭帯および骨盤漏斗靭帯との連続性は認められなかった.左卵管は数珠状に捻転し欠失はなかった.萎縮した左卵巣および右付属器は正常解剖位置に存在していた.今回の2症例では,MCTは子宮および骨盤漏斗靱帯との解剖学的連続性を欠いており,卵管采との連続が認められ た.症例2では卵管の捻転を認めており,これらの所見はMCTにおける捻 転,autoamputationおよびreimplantationを経て寄生性MCTが形成されるという仮説を支持する病態学的根拠となる可能性がある.寄生MCTは卵管采に連続していた所見ならびに膀胱子宮窩に存在した所見がまれと考えられるため,ここに報告する.〔産婦の進歩78(1),2026年(令和8年2月)〕
 
キーワード:寄生成熟囊胞性奇形腫,Autoamputation,膀胱子宮窩,卵管采,腹腔鏡手術