HOME | 学会誌 | 次号掲載予定の最新論文


産婦人科の進歩
次号掲載予定の最新論文


 症例報告  <78巻3号 掲載予定>

化学性腹膜炎を伴った子宮内膜症性囊胞破裂に併発した正常血糖糖尿病性ケトアシドーシスの1例

著者・共著者:

槇田 美緒,小薗 祐喜,山内 綱大,児嶋 真千子, 奥田 亜紀子,吉岡 弓子,堀江 昭史,樋口 壽宏

所    属:

公益財団法人田附興風会 医学研究所 北野病院 産婦人科

受付日 2025/10/21

ナトリウム―グルコース共輸送体2(sodium-glucose cotransporter 2;SGLT2)阻害薬の副作用として正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス(euglycemic diabetic ketoacidosis;euDKA)が知られている.今回,診断に苦慮したeuDKAの1例を経験した.2型糖尿病でSGLT2阻害薬を服用中の48歳女性が,卵巣子宮内膜症性囊胞破裂に対する保存的療法の経過中に,代謝性アシドーシスを伴う急性腹症を発症した.囊胞感染を疑い開腹手術を施行したが,術中に感染所見を認めず,術後も代謝性アシドーシスは改善しなかった.euDKAを疑ってインスリン投与を開始したところ,速やかな改善が得られた.SGLT2阻害薬を服用中の患者が酸塩基平衡異常を呈した場合には,euDKAの可能性を考慮することが重要である.〔産婦の進歩78(3),2026(令和8年8月)〕

 
キーワード:SGLT2阻害薬,正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス,子宮内膜症


 症例報告  <78巻3号 掲載予定>

母体Listeria monocytogenes感染症に起因する絨毛膜羊膜炎により早産に至った2例

著者・共著者:

竹田 佳奈1),上林 潤也2),樋口 渚2),脇 啓太2),牧野 佑子2),前川 亮2),木村 文則2)

所    属:

1)大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 産婦人科

2)奈良県立医科大学 産婦人科学講座

受付日 2025/9/29

Listeria monocytogenes( L.monocytogenes) による絨毛膜羊膜炎(CAM)で早産に至った2例を報告する.症例1:32歳,妊娠20週5日に発熱を認め,妊娠22週4日に子宮収縮と破水のため当院へ搬送となった.臨床的絨毛膜羊膜炎(cCAM)と診断しアンピシリナトリウム(ABPC),エリスロマイシン(EM)の投与を開始したが妊娠22週6日に分娩となった.母体腟培養よりL.monocytogenesが検出され,胎盤病理学的検査ではCAMおよび臍帯炎を認めた.症例2:28歳,妊娠33週3日に胎動減少のために前医を受診し,頸管長短縮と子宮収縮を認め入院となった.妊娠33週4日に母体発熱と胎児頻脈があり当院へ搬送され,cCAMの診断でABPCとEMの投与を開始したが搬送同日に分娩となった.母体血液培養よりL.monocytogenesが検出された.症例1では原因物質の特定はできなかったが,症例2では妊娠32週2日に非加熱乳製品(レアチーズケーキ)を摂取していたことが判明し感染源と推察された.今回の2症例は早産となり分娩後に母体L.monocytogenes感染症と診断された.発熱など感染症状以外にも,子宮収縮の増加や胎動減少が受診の契機となることもあり本疾患も念頭に置き診療すべきである.妊娠中は非加熱乳製品や食肉加工製品の摂取を避けるよう,患者に啓発することも重要である.〔産婦の進歩78(3),2026(令和8年8月)〕

 
キーワード:絨毛膜羊膜炎,Listeria monocytogenes,早産


 症例報告  <78巻3号 掲載予定>

術前にperitoneal inclusion cystと診断され腹腔鏡下手術を施行した巨大卵管留水腫の不妊症の1例

著者・共著者:

西沢 美奈子,沈 嬌,大谷 梓沙,文 美智子,井上 基,水田 知紘,安井 悠里,大西 洋子

所    属:

地方独立行政法人 市立吹田市民病院 産婦人科

受付日 2025/4/18

骨盤内囊胞は骨盤内臓器に由来する腫瘍性囊胞のほかに,手術や感染症などが原因で発生する非腫瘍性囊胞,peritoneal inclusion cyst(PIC)の可能性がある.今回PICの術前診断で腹腔鏡下手術を実施し,術後に巨大卵管留水腫と判明した不妊症の1例を経験した.症例は7歳時に開腹手術歴があり,30歳頃より不妊症,挙児希望にて当科受診.超音波検査,骨盤部単純MRI検査で10 cmのPICおよび7 cmの右卵管留水腫を疑われた.手術を提案したが希望しなかった.自然経過観察中に妊娠に至らず,その後通院は自己中断となった.40歳時に腹部膨満感のため再度当科受診.PICは14 cm,右卵管留水腫は9 cmと増大し,腹腔鏡下手術を実施した.以前から指摘されたPICは左卵管留水腫であった.PICはそれ自体が妊孕性を妨げるものではないが,骨盤内手術や感染症などが原因で発生し,これらによる癒着は不妊を引き起こしうる.また,卵管留水腫は不妊因子とされ,不妊症を伴う骨盤内囊胞は卵管病変を有する可能性を考慮し,積極的に手術療法を検討すべきと考える.〔産婦の進歩78(3),2026(令和8年8月)〕

 
キーワード:骨盤内囊胞,卵管留水腫,peritoneal inclusion cyst,不妊症,腹腔鏡手術


 症例報告  <78巻3号 掲載予定>

妊娠34週にダグラス窩に位置した卵巣腫瘍の茎捻転に対して開腹術を施行し妊娠を継続し得た1例

著者・共著者:

上田 三郎,池田 真規子,熊﨑 晴香,山岡 侑介,安堂 有希子,佐藤 浩,田口 奈緒,角井 和代

所    属:

兵庫県立尼崎総合医療センター 産婦人科

受付日 2025/10/2

本症例は妊娠34週で卵巣腫瘍茎捻転をきたした症例である.妊娠初期よりダグラス窩に左卵巣囊腫を認め経過観察としていたが,卵巣囊腫の大きさ,位置,性状に著変を認めなかった.妊娠34週に腹痛を主訴に救急受診し,画像診断にて左卵巣腫瘍茎捻転を疑い開腹手術を施行した.術中所見では卵巣腫瘍はダグラス窩に位置し,鶏卵大に腫大,720度捻転を認めた.摘出標本は漿液性囊胞腺腫であった.術後は一過性の麻痺性イレウスを認めたが,保存的加療にて軽快し,正期産での自然分娩に至った.子宮付属器腫瘍茎捻転はまれではあるが,妊娠後期にも発症し得る.超音波検査では妊娠後期に付属器の評価が困難なことがあり,CT検査やMRI検査などの各種画像検査の特徴を理解し,必要に応じて実施し,妊娠週数・胎児状態・腫瘍位置に応じて最適な術式を選択すること,妊娠継続の要否を慎重に判断することがきわめて重要である.〔産婦の進歩78(3),2026(令和8年8月)〕

 
キーワード:卵巣腫瘍,茎捻転,妊娠第三半期,ダグラス窩,開腹手術


 症例報告  <78巻3号 掲載予定>

子宮体癌再発と鑑別が困難であった腹腔内発症の胚中心進展性異形成の1例

著者・共著者:

原岡 優子1,2),住友 理浩2),松下 克子2),冨田 裕之2),宇治田 麻里2)

所    属:

1)神戸市立医療センター中央市民病院 産婦人科

2)天理よろづ相談所病院 産婦人科

受付日 2025/8/26

子宮体癌治療後の経過観察において,検査結果の解釈に苦慮することがある.今回,子宮体癌術後の経過観察中にCTで腸間膜再発が疑われ,FDG-PET/CTでも再発の可能性があると判断したが摘出後の病理診断で胚中心進展性異形成の診断となった症例を経験したので報告する.症例は36歳,0妊,子宮体癌ⅠA期(類内膜癌Grade1)の診断でロボット支援下子宮全摘,両側付属器切除,骨盤リンパ節郭清術を他院で施行された.術後病理診断でpT3aN0M0の診断となり,術後補助化学療法を施行された.転居に伴い当科で経過観察を継続していたが,術後4年6カ月の造影CTで腸間膜に新規結節を認め,FDG-PET/CTで同部位に集積亢進を認めた.子宮体癌の再発と診断し腫瘍摘出術を行ったが,病理学的に腸間膜リンパ節に発生した胚中心進展性異形成と診断された.胚中心進展性異形成が腹腔内リンパ節に発生することはまれであり,画像所見は再発病変に類似するため,術前の鑑別が困難であった.術前の鑑別が困難であるがゆえに,診断目的の手術を要したまれな疾患を経験したので報告する.〔産婦の進歩78(3),2026(令和8年8月)〕

 
キーワード:子宮体癌,再発,FDG-PET,二次減量手術,胚中心進展性異形成


 症例報告  <78巻3号 掲載予定>

切迫早産の兆候が先行した臨床的急性妊娠性脂肪肝の2症例

著者・共著者:

熊﨑 晴香,池田 真規子,竹村 有理,増田 望穂,安堂 有希子,佐藤 浩,田口 奈緒,角井 和代

所    属:

兵庫県立尼崎総合医療センター 産婦人科

受付日 2025/9/29

急性妊娠性脂肪肝(acute fatty liver of pregnancy;AFLP)は母児ともに高い死亡率を有するまれな疾患である.多くは上腹部痛,悪心,黄疸などの消化器症状で発症するとされているが,今回われわれは切迫早産を契機に診断された臨床的AFLPの2症例を経験した.症例1は妊娠33週6日,早産期前期破水を契機に搬送され,症例2は妊娠35週0日,子宮収縮と子宮口開大を契機に搬送された.精査にて肝腎機能障害,低血糖,凝固能異常などの特徴的所見を示し,Swansea診断基準の6項目以上を満たしたため,臨床的AFLPと診断した.分娩はいずれも帝王切開で行い,術後に集中治療を要したが,適切な周術期管理により母児ともに良好な経過をたどった.典型的な自覚症状が乏しい症例もあるため,血液検査異常によりAFLPを疑い,早期診断と適切な周産期管理を行うことが重要であると考えられた.〔産婦の進歩78(3),2026(令和8年8月)〕

 
キーワード:急性妊娠脂肪肝,Swansea 診断基準,周産期管理,切迫早産,妊娠高血圧症候群


 原  著  <77巻3号 掲載予定>

当院における過去10年間の骨盤位外回転術の成績

著者・共著者:

姜 雅衣,松木 貴子,小川 萌,濱田 真一,大西 淳仁,宮武 崇,山嵜 正人,村田 雄二

所    属:

社会医療法人生長会 ベルランド総合病院 産婦人科

受付日 2025/9/29

背景:単胎骨盤位の経腟分娩は,新生児仮死のリスクが高い.日本では帝王切開術が選択されることが多く,反復帝王切開術の増加を招く.当院では,骨盤位による帝王切開術を減少させるため外回転術を施行している.今回,過去10年間の外回転術の成績に関して検討した.対象:2015年1月から2024年12月の間に当院で行われた外回転術118症例を対象とした.選択基準は頭位経腟分娩が可能であり,35週以降の単胎であること,子宮手術の既往がないこととした.方法:当院では子宮収縮抑制剤を併用し,術中は常に超音波検査による胎児心拍の確認を行い,術前後と翌日にNSTを確認し退院となる.外回転術の成績と成功に寄与する周産期背景,合併症について後方視的に検討した.結果:118例のうち初産婦64例,経産婦54例であった.外回転術の成功率は51.7%であった.経産婦で成功率が高かった(p=0.027)がその他の周産期因子で成功率に有意差はなかった.合併症のうち,緊急帝王切開術を要するものは2.5%であった.結語:外回転術は帝王切開術の減少につながると考えられた.〔産婦の進歩78(3),2026(令和8年8月)〕